辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
第七話 願い
■ 第七話 願い
サリーシャは中庭に立っていた。
初めてここを訪れた時と同じく、通路の石畳はところどころがひび割れ、苔が付いている。花壇になっていたと思われるブロックに囲まれた一部も崩れ落ちているし、全体的に荒れていると思った。
つい先日、セシリオから中庭を管理して欲しいと言われ、鍵を渡された。その時、それをたまらなく嬉しいと感じた自分がいた。
食事に向かうたびに気持ちが浮き立つ自分に、とっくに気付いていた。
微笑まれるたびに胸の鼓動が跳ねることに、とっくに気付いていた。
包み込むように与えられる抱擁に歓喜する自分に、とっくに気付いていた。
そして、頬に触れる温もりに、物足りなさを感じている自分にも……
足元に咲くスミレが目に入り、サリーシャはそれを摘むと顔を寄せた。
「綺麗だわ……」
紫と黄色の花弁は小さくとも、しっかりと自らの美しさを自己主張している。サリーシャは暫くそれを見つめ、ふぅっと息を吐いた。
サリーシャは中庭に立っていた。
初めてここを訪れた時と同じく、通路の石畳はところどころがひび割れ、苔が付いている。花壇になっていたと思われるブロックに囲まれた一部も崩れ落ちているし、全体的に荒れていると思った。
つい先日、セシリオから中庭を管理して欲しいと言われ、鍵を渡された。その時、それをたまらなく嬉しいと感じた自分がいた。
食事に向かうたびに気持ちが浮き立つ自分に、とっくに気付いていた。
微笑まれるたびに胸の鼓動が跳ねることに、とっくに気付いていた。
包み込むように与えられる抱擁に歓喜する自分に、とっくに気付いていた。
そして、頬に触れる温もりに、物足りなさを感じている自分にも……
足元に咲くスミレが目に入り、サリーシャはそれを摘むと顔を寄せた。
「綺麗だわ……」
紫と黄色の花弁は小さくとも、しっかりと自らの美しさを自己主張している。サリーシャは暫くそれを見つめ、ふぅっと息を吐いた。