辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「どうしたいか決めたら、ドリスに言うといい。すぐに庭師を手配する」

 柔らかな眼差しでこちらを見つめるセシリオを見返し、サリーシャはぎゅっと胸を掴まれるような痛みを感じた。

 そろそろ仕事に戻ろうと背を向けたセシリオを、思わず呼び止めた。

「閣下!」

 セシリオは足を止め、ゆっくりと振り返った。こちらを向いたヘーゼル色の瞳が優しく細められる。

「どうした?」
「あの……、わたくしは……。わたくしは、本当にここを管理してよいのでしょうか?」

 ──あなたに、大事なことを隠したままなのに。

 けれど、その言葉は最後まで言えなかった。言ってしまって、この人に軽蔑されることが心底怖かった。
 セシリオは少し首をかしげると、もう一度サリーシャの元に戻ってきた。
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