辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「もちろんだ。きみに任せたい」
「……でも。でも……、わたくしは……」
「きみは?」
聞き返したセシリオの眉根が僅かに寄り、大きな手がサリーシャの頬を撫でた。節くれだった指が両頬を滑り、サリーシャは自分が泣いていることに気づいた。
「……わたくしは、相応しくないのです」
やっと口からこぼれ落ちた言葉を聞き、セシリオはサリーシャの両頬を包んだまま、その瑠璃色の瞳を覗きこんだ。
「そんなことはない。だが、一人では心配なら、一緒に考えようか。まだここに来たばかりで、不安なんだな。気づいてやれなくて、悪かった」
両頬から手が離れ、代わりに体がすっぽりと包まれた。毎晩のような、優しい抱擁。大きな手が背中を優しく撫でる。サリーシャはその温もりにすがりたい気分になり、大きな背中に手を回した。
──わたくしは、この人にだけは、嫌われたくないのだ。ずっと抱きしめられて、安心させて欲しいのだ。そして、できる事なら、愛して欲しいのだ。