辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
ヘンリーとはアハマスの第二部隊に所属する軍人だ。とても優秀な男だが、ついこの間、結婚式に花嫁が現れないという、セシリオが知る限りでは前代未聞の大事件を起こした。人さらいが出たのではと、家族や職場の同僚まで巻き込んでの大騒ぎになり、皆で必死に探し回った。もちろん、セシリオもその捜索に加わった一人だ。
結局、花嫁は自宅から教会に向かう途中の河岸で物思いに耽っているところを発見された。
そして、教会に現れなかった理由は「ウェディングドレスの裾の刺繍が、本当にあれでよかったのか、よくわからなくなったから」という、セシリオからすればなんともバカらしい理由だった。しかし、本人からすれば大問題だったらしい。
セシリオはあの日のことを思い出して、苦々しい気分になった。
「では、彼女もウェディングドレスに悩んでいると?」
「知るか。本人に聞けよ。ところで、昨日来た報告書にはなんと?」
モーリスがセシリオの手にある手紙を視線で指し示す。セシリオが私室に忘れてきたのは、宰相からの密命を受けてダカール国の動きを探りに国境付近で活動していた部下達から届いた報告書だった。
「報告書とマリアンネ嬢からの手紙を間違えるなんて、お前どうかしてるぞ」
「同じ白に赤の封蝋だったから、見間違えたんだ」
結局、花嫁は自宅から教会に向かう途中の河岸で物思いに耽っているところを発見された。
そして、教会に現れなかった理由は「ウェディングドレスの裾の刺繍が、本当にあれでよかったのか、よくわからなくなったから」という、セシリオからすればなんともバカらしい理由だった。しかし、本人からすれば大問題だったらしい。
セシリオはあの日のことを思い出して、苦々しい気分になった。
「では、彼女もウェディングドレスに悩んでいると?」
「知るか。本人に聞けよ。ところで、昨日来た報告書にはなんと?」
モーリスがセシリオの手にある手紙を視線で指し示す。セシリオが私室に忘れてきたのは、宰相からの密命を受けてダカール国の動きを探りに国境付近で活動していた部下達から届いた報告書だった。
「報告書とマリアンネ嬢からの手紙を間違えるなんて、お前どうかしてるぞ」
「同じ白に赤の封蝋だったから、見間違えたんだ」