辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 セシリオはこれを見たらなんと言うだろう。懐かしがってくれるだろうか。あのヘーゼル色の瞳を優しく細めて笑ってくれるだろうか。
 サリーシャはそんなことを想像して、自然と表情を綻ばせた。

 ──そして、この庭園が完成した時に、彼にちゃんと打ち明けよう。

 いくら二十代の若き辺境伯とはいえ、婚姻後間もなく離縁すればそれなりに悪評が立つ。これまでは自分可愛さに隠せるところまで隠し通すつもりだった。けれど、セシリオのことを思うならばそんなことはすべきではないと思った。これ以上、彼に嘘をつきたくないのだ。

 ──大丈夫。きっとセシリオ様は受け止めて下さるわ。

 サリーシャはそう自分に言い聞かせると、自身の手を胸の前でぎゅっと握りしめた。
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