辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
第三章 招かざる訪問者
第一話 招かざる客
■ 第三章 招かざる客
■ 第一話 招かざる客
真っ白なハンカチに、一針一針、丁寧に針を刺してゆくと、始めは何もなかった真っ白な生地に徐々に形が現れてゆく。一刺しを積み重ねる度に段々と思い描いているものに近づいていく様は、作っていてとても楽しい。
サリーシャは刺していた刺繍を一度テーブルに置くと、少し背中を反らせ、距離を置いてそれを眺めた。そこにはまるで今にも走り出しそうな軍馬が、絡み合う糸によって描かれていた。モチーフにした焦げ茶色の軍馬は、ここに来て見せてもらったセシリオの愛馬──デオだ。サリーシャのよく知る、馬車やちょっとした乗馬に使う馬とは違う、とても大きな馬だった。大きな体つきのセシリオにぴったりの、立派な馬だ。
「あとは、セシリオ様の『C』を入れれば完成だわ」
サリーシャはその出来映えに満足したように微笑んだ。
セシリオと城下町に出掛けた日に、サリーシャは初めて会った日に渡したシルクハットの刺繍を施したハンカチを回収した。
■ 第一話 招かざる客
真っ白なハンカチに、一針一針、丁寧に針を刺してゆくと、始めは何もなかった真っ白な生地に徐々に形が現れてゆく。一刺しを積み重ねる度に段々と思い描いているものに近づいていく様は、作っていてとても楽しい。
サリーシャは刺していた刺繍を一度テーブルに置くと、少し背中を反らせ、距離を置いてそれを眺めた。そこにはまるで今にも走り出しそうな軍馬が、絡み合う糸によって描かれていた。モチーフにした焦げ茶色の軍馬は、ここに来て見せてもらったセシリオの愛馬──デオだ。サリーシャのよく知る、馬車やちょっとした乗馬に使う馬とは違う、とても大きな馬だった。大きな体つきのセシリオにぴったりの、立派な馬だ。
「あとは、セシリオ様の『C』を入れれば完成だわ」
サリーシャはその出来映えに満足したように微笑んだ。
セシリオと城下町に出掛けた日に、サリーシャは初めて会った日に渡したシルクハットの刺繍を施したハンカチを回収した。