辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「これは、ようこそいらっしゃいました。マリアンネお嬢様」
「遅いわよ、ドリス」
つんとした態度の来客に、ドリスの後ろに控える侍女達は不安そうに顔を見合わせた。ドリスがチラリと目配せすると、一人の侍女がいそいそと屋敷に戻って行く。
「何をしているの? 早く部屋に案内してちょうだい」
「かしこまりました。ところで、旦那様には……」
「もちろん、手紙で来ることは伝えてあるわ。何か問題でも?」
「いえ、何も」
話にならないとばかりに、口ごもるドリスの横をすり抜けてマリアンネは屋敷の方へ歩き始めた。足を進めるたびに、高価な靴が石の床に当たりカツンカツンと軽快な音を鳴らす。後に続くマリアンネの侍女達も荷物を持ってその後に続くのを見て、ドリスは慌てた様子で追いかけた。
「お待ちください、お嬢様!」
「マリアンネ」