辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「来るにしても今の時期はちょっとまずいよな。もちろん、お前の結婚のこともあるんだが、例の件が……」
セシリオのすぐ前まで来て顔を寄せたモーリスが、二人にしか聞こえないような小さな声で囁く。それを聞いたセシリオは、ぐっと眉を寄せ、口をへの字にした。
「ああ、想定外だ。しかも、ブラウナー侯爵まで来ると言っていた」
「そりゃ、想定外だ。もう王都にボールは渡したと思っていたんだかな。まあ、しかし、来ちまったもんはしかたがねーな」
モーリスは首の後ろに片手をあて、弱ったような顔をした。
モーリスの言う通り、今マリアンネが来るのは非常に時期が悪い。サリーシャのこともあるが、国から調査依頼されたフィリップ殿下の婚約披露会の襲撃の件で動きがありそうなので、今はとても重要な時期なのだ。マリアンネの相手などしている暇はない。それに、マリアンネの父親であるブラウナー侯爵はよりによって……
「閣下!」