辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 サリーシャの花冠作りになど全く興味がなかったはずなのに、にこにこしながら付き合ってくれた。

「ねえ。僕、よくここにいるからまた寂しくなったらおいでよ。人に教えてもらった、秘密の場所なんだ。僕も遊び相手や話相手があまりいないから」
「うん」

 彼が未来の国王陛下だとサリーシャが知ったのは、それから数ヶ月経過したころだった。マオーニ伯爵はサリーシャがフィリップ殿下といつの間にか仲良くなっていたことを、とても喜んだ。よくやったと屋敷に戻ってからもしきりに褒められた。

 しっかりと勉強してフィリップ殿下の隣に立つのだと、ただそれだけを言われ続けた。
 それからは辛い王妃候補の教育も、文句一つ言わずにしっかりとこなした。頑張ってお勉強もしたし、礼儀作法も完璧だ。初めて会う人は、だれもサリーシャが田舎の農家の娘だなんて想像しないだろう。

 しかし、サリーシャは与えられたミッションに失敗してしまった。
 きっと、最初から無理だったのだ。元は田舎の農家の娘なのに、王妃様になれだなんて、無理がある。

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