辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「本を選んでましたの。わたくしはもう選び終わりましたので、どうぞごゆっくり」
サリーシャはそう言うと、マリアンネの横をすり抜けて部屋に戻ろうとした。しかしその時、マリアンネがサリーシャを呼び止めた。
「待って、サリーシャ様。ちょっとよろしくて?」
「はい?」
サリーシャは戸惑いつつもそこで立ち止まった。マリアンネは視線を左右に走らせてぐるりと図書室の中を見回すと、廊下と繋がるドアを後ろ手でパタリと閉じた。
「あの……、どうかされましたか?」
「わたくし、少しだけサリーシャ様とお話がしたかったの。ちょうどよかったわ。あそこに椅子があるから、少し座らない?」
マリアンネはにこりと笑って見せると、図書室に設えられた小さなテーブルと、テーブルを挟んで向かい合う一人掛けソファーのセットを指さした。
そして、返事を聞くことなく先に自分がそこに腰を下ろしたので、サリーシャもおずおずとそれに従いマリアンネの前に腰を下ろした。