辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

 改めてマリアンネと向き合って彼女を近くで見たサリーシャは、マリアンネのことを妖艶な美女という言葉がぴったりの人だと思った。

 緩くカールした栗色の髪は艶やかで、今日も昨日と同じくオフショルダーの大きく空いたドレスを着ている。真っ白な胸元からは豊かな谷間が覗いており、水色のドレスにより、余計に肌の白さが引き立っていた。大きなこげ茶色の瞳は自信に満ちており、紅がひかれた真っ赤な唇はぷるんとして魅惑的だ。

「それで、話とは?」
「お久しぶりね、サリーシャ様。ここでお会いする以前にお見かけしたのは王都でのフィリップ殿下の婚約披露のとき以来かしら?」
「そうですわね」

 サリーシャは小さく頷いた。
 マリアンネは視線を移動させてサリーシャの膝に置かれた本を見つめると、「それ、懐かしいわ」と呟いた。サリーシャもつられて今さっき見つけてきた、ひざの上の本に視線を落とした。

「この本をお読みになったことが?」
「ええ。だって、その本、わたくしのためにセシリオ様が買って下さったのだもの」
「マリアンネ様のために?」
< 149 / 354 >

この作品をシェア

pagetop