辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

 マリアンネのためにセシリオが買ったという意味がよく分からず、サリーシャは眉をひそめた。マリアンネはゆったりとした動作で窓の外の雨が降る様を眺めると、ほうっと小さく息を吐く。窓の外ではしとしとと小雨が降り続いていた。

「──ねえ、婚約披露があった日、ならず者が事件を起こしたでしょう?」
「はい……」
「あれね、ダカール国が怪しいんですって。お父様が言ってたわ。陰で糸を引いてる可能性が高いの」

 マリアンネは何ともないことのように、恐らくは国家機密にすら当たるであろう秘密事項を言い放つ。
 サリーシャは、突然マリアンネが話し始めた話題に面を食らった。図書室でわざわざ呼び止めてきたと思えば、この人は一体何の話を始めるのか。マリアンネはそんなサリーシャの様子に構うことなく、話を続けた。

「ダカール国と戦争になれば、間違いなく前線はここ、アハマスになる。セシリオ様は軍を率いる将軍の役目を負うわ。ところで、わたくしの実家のブラウナー侯爵家は、タイタリア王国一の武器・防具を扱う商社を擁しておりますの。つまり、国防軍を担うアハマス辺境伯家と兵器を扱うブラウナー侯爵家は切っても切れない関係なのよ」
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