辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「ああ、俺が悪かった。きみの優しさに甘えてしまった。済まない。……埋め合わせに、今からデオに乗りにいこうか?」
「今から?」

 サリーシャは驚いて顔を上げた。まだ暗くはないが、だいぶ日が傾いている。壁の色は既にオレンジから赤に変わってきていた。出掛けるには少し遅すぎるし、もう少ししたら夕食の時間になる。

「でも、もうすぐ夕食の時間ですわ」
「またきみはそうやっていい子になる。一緒に馬に乗りたかったのだろう? こんなに怒るくらい」
「……乗りたかったわ」
「じゃあ、行こう。この時間にはこの時間のよさがある」

 セシリオはすくっと立ち上がると、サリーシャの手を引っ張りあげ、立ち上がらせた。そのまま力強くサリーシャの手を引き、迷うことなく歩きだすと厩舎へと向かう。

「ドリス、夕食は遅くなる。マリアンネには先に食べて貰ってくれ」

 屋敷の入り口付近でドリスに会い、セシリオは短く要件を伝えた。ドリスは目をぱちくりとさせると、すぐに何を察したように柔らかく微笑んで「かしこまりました」と、お辞儀をした。

「急ごう。間に合わなくなる」
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