辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「……閣下は…、わたくしと婚約解消してマリアンネ様とまた婚約されるのですか?」
「なにを、ばかなことを。そんなことをするわけがないだろう?」
セシリオの眉が不愉快げに寄る。
「でも、マリアンネ様のご実家はアハマスに欠かせない存在だって……」
「サリーシャ。マリアンネから何を聞いてどう思ったのかは知らないが、俺はきみと結婚したいと思っている。ほかの誰とでもなく、きみとだ」
両頬を包まれたまま、セシリオの顔が近づき、不意に唇へ柔らかなものが触れた。サリーシャは驚きで目を見開いた。鼻と鼻がぶつかりそうな近距離で、ヘーゼル色の瞳がサリーシャを見つめている。
「それに今、きみは全身で俺を好きだと言っている」
「っ! そんなことは!」
サリーシャは羞恥からカアッと体が熱くなるのを感じた。確かにぼろぼろと泣いて一緒に出掛けたかったと拗ねるなど、セシリオを好きだと言っているようなものだ。
「そんなことは?」
「……」
「聞かせてくれ、サリーシャ。俺が信じられない?」
「いいえ、……お慕いしています」