辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「──閣下。今日は申し訳ありませんでした」
「なにが?」
「だって、マリアンネ様をご一緒にと誘ったのはわたくしなのに、あのように閣下を責めて……」
「ああ、構わない。俺がもう少し、きみの気持ちを考えるべきだった」
シュンとしたサリーシャを元気付けるようにセシリオはサリーシャお腹に回した手でぽんぽんと叩く。そして、サリーシャの首元に顔を埋めるように寄せた。耳元で囁かれた低い声が優しく鼓膜を揺らす。
「見て、サリーシャ。星が出てきた」
サリーシャは咄嗟に顔を上げた。見上げた空には、半分ほど欠けた白い月が浮かんでいるのが見える。そして、そこから少し横に目を向けると、薄暗くなり始めた空にちらほらとまたたく星が見え始めていた。
「まあ、綺麗だわ」
「そうだな。きみと見れてよかった」
サリーシャの首元から顔を上げたセシリオも星を見上げる。その美しさに目を細めると、前に座るサリーシャを抱き寄せる腕に力を込めた。