辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「サリーシャ。これからは言いたいことがあるときは言ってくれ。もう知っているかも知れないが、俺はあまり女性の機微に気付くことができない。きみを我慢させたくないんだ」
「……一つだけお願いしても?」
「もちろん」
サリーシャは自分の手元を見つめてから、勇気をもって顔を上げた。ずっとこちらを見つめていたのか、セシリオのヘーゼル色の瞳とすぐに視線が絡まった。
「本を。マリアンネ様には本を贈られたと聞きました。わたくしも、閣下から贈って欲しいです」
語尾に行くにつれて段々と声が小さくなっていることには自分でも気づいた。色々なものをプレゼントされているマリアンネが羨ましくて、だいぶ大人げないおねだりをしている自覚はある。
「本? 本だけでいいのか? ドレスや宝石は?」
セシリオは少し拍子抜けしたような顔をした。