辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「きみが俺になにか物をおねだりしてくれるのは、初めてだな」
「面倒だと思われましたか?」
「いや? 女の我儘は面倒だと思っていたが、きみからのおねだりは、むしろ嬉しいものだな」
そう言うと、ヘーゼル色の瞳を真っ直ぐにサリーシャに向けた。
「今日の俺は、色々と浮かれている」
こちらを見つめる瞳の奥に熱を孕んでいるのに気づき、サリーシャはドキリとした。ゆっくりと顔が近づくのを感じ、目を閉じるとそっと唇が重なる。最初は触れるだけだったそれは、角度を変えながら徐々に深まっていった。
鼻に抜けるような吐息が漏れる。僅かなお酒の味と、ふわりふわりと浮つくような高揚感。遠くからカツンカツンと、何か固いものを鳴らすような音がした。
トントンと木を叩くような音。