辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
セシリオの眉間にぐっと皺が寄る。
「駄目だ。見ろ」
近づいてきたモーリスは、セシリオの前にズイっと封筒を差し出した。その封筒を受け取ると、憮然としたセシリオが封蝋を確認するように眺めた。
「確かに黄色だな。くそっ」
セシリオは忌々しげにそう吐き捨てると、片手で鼻の付け根部分の両目頭のあたりをぐりぐりと押した。そして、あからさまに不満げな表情をしたまま、はぁっとため息をつくとサリーシャの方を向いた。
「すまない、急な仕事が入ったようだ。部屋まで送ろう」
サリーシャはきっと赤くなっているであろう頬を両手で押さえてコクリと頷き、セシリオが持つ封筒をみた。赤い封蝋の印はサリーシャの知る、王室の紋章に見えた。
──何が黄色なのかしら?
封筒は白いし、封蝋は赤い。どこにも黄色い要素は見当たらなかった。サリーシャはちょっとした疑問を覚えたものの、セシリオに促されるまま部屋に戻ったのだった。