辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

第二話 突然の求婚者

■ 第二話 突然の求婚者

 目を覚ますと、真っ白なシーツが視界一杯に広がった。少しだけ視線をずらすと、見慣れた天蓋の枠とそこから吊下ったカーテンのドレープが見える。
 寝台を覆うアイボリーカラーの落ち着いた色合いのそれは、侍女のノーラが選んでくれたものだ。裾の部分がフリルになっており、落ち着いた中にも可愛らしさがあり、サリーシャもとても気に入っている。

 そう。もうだめかと思われたサリーシャは、奇跡的に一命を取り留めた。
 背中を刃物で斬りつけられたサリーシャは、致命傷を負った。通常なら命を落とすレベルの大怪我にも関わらずこうして生きているのは、事件直後にタイタリア王室が威信にかけて、最高の医師団をサリーシャのために手配してくれたからに他ならない。
 あとから聞いた話では、賊は衛兵たちにすぐに捕らえられたが、奥歯に仕込んでいた毒で自害したため、真相は闇の中だという。

「お嬢様、お目覚めですか?」

 しばらくぼんやりとしていると、侍女のノーラの声がして、寝台を覆うドレープが少し揺れた。

「ええ、起きているわ。今、何時かしら?」

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