辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「フィル?」

 しかし、そこに居たのはフィルとは似ても似つかない、大人の男の人だった。

「あ、すまん。邪魔したな。ここはいつも誰もいないから、昼寝でもしようと思ったんだが……」

 男の人はサリーシャが居たことが予想外だったようで、目を丸くした。そして、慌てたように引き返そうとした。

「ねえ、お兄さん!」

 サリーシャは咄嗟に声を掛けた。ここに先にいたのは確かにサリーシャだが、ここはサリーシャの専用の場所ではない。

「お昼寝していてもいいよ。わたし、お友達を待っているのだけど、今日は遅いから、来ないかもしれないの」
「お友達?」
「うん。フィルって言うの」

 サリーシャがそう教えると、男の人は「あぁ」と納得したように呟いた。

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