辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
違う、断じて違う。
サリーシャは自分の行動がどんなに愚かだったかを思い知らされた。なにも言わずに去れば、セシリオがそう思うのも無理はなかった。こんなにもよくしてくれた人をサリーシャは酷く傷つけ、侮辱するような行動をとった。恩を仇で返したのだ。
「違うのです。わたくしが全て悪いのです。……わたくしは、閣下をずっと騙していました」
自分が傷つくことなど恐れずに、最初からちゃんと言うべきだった。もしここに到着した日にきちんと告げていれば、まだ目の前の男性と引き裂かれることに、こんなにも気持ちを抉られなかっただろう。全ては、先へ先へと伸ばした自分の責任なのだ。
「俺を騙していた?」
セシリオが訝し気に眉をひそめる。サリーシャはぼろぼろと零れ落ちる涙を拭いながら、頷いた。
「夕食のあと、ブラウナー侯爵とのお話を立ち聞きしてしまいました。ブラウナー侯爵の言うとおり、あれは真実なのです」
「──どの部分がだ?」
地を這うような低い声だった。子どもであればその声だけで震えあがり泣きだすような、怒りに満ちた声。サリーシャは、一度目を閉じると深く息を吸い込み、覚悟を決めてセシリオの顔を見つめた。
サリーシャは自分の行動がどんなに愚かだったかを思い知らされた。なにも言わずに去れば、セシリオがそう思うのも無理はなかった。こんなにもよくしてくれた人をサリーシャは酷く傷つけ、侮辱するような行動をとった。恩を仇で返したのだ。
「違うのです。わたくしが全て悪いのです。……わたくしは、閣下をずっと騙していました」
自分が傷つくことなど恐れずに、最初からちゃんと言うべきだった。もしここに到着した日にきちんと告げていれば、まだ目の前の男性と引き裂かれることに、こんなにも気持ちを抉られなかっただろう。全ては、先へ先へと伸ばした自分の責任なのだ。
「俺を騙していた?」
セシリオが訝し気に眉をひそめる。サリーシャはぼろぼろと零れ落ちる涙を拭いながら、頷いた。
「夕食のあと、ブラウナー侯爵とのお話を立ち聞きしてしまいました。ブラウナー侯爵の言うとおり、あれは真実なのです」
「──どの部分がだ?」
地を這うような低い声だった。子どもであればその声だけで震えあがり泣きだすような、怒りに満ちた声。サリーシャは、一度目を閉じると深く息を吸い込み、覚悟を決めてセシリオの顔を見つめた。