辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 ぼんやりとしていると、さきほどと同じドアが開き、セシリオが戻ってきた。片手には水の入ったグラスを、もう片方の手には開封済みの封筒を何通か持っている。
 セシリオはまっすぐにサリーシャのいるベッドの脇まで歩いてくると、まずグラスを手渡した。透明の液体がグラスの中でゆらゆらと揺れている。こくりと飲み込みむと、渇いた喉に冷たい水がスーッと染み渡った。

 セシリオはじっとその様子を見守っていたが、サリーシャが飲み終えると空になったそれを受け取り、壁際のサイドボードの上にのせた。そして戻ってくると、今度は当たり前のように同じベッドの上に腰を下ろした。サリーシャの腰に逞しい腕を回すと、ぐいっと引き寄せる。後ろからすっぽりと抱え込まれるように抱き寄せられ、セシリオはサリーシャの肩に顎を乗せるように顔を寄せた。

「きみは昼間も可愛いらしいが、夜は妖艶だった。それでいて、寝ている姿は子供のように愛らしい。どれだけ俺を(とりこ)にするつもりだ?」
「なっ!」

 厚い胸板に自らの背がぴったりと密着するような状態。後ろから囁くように直接耳に吹き込まれた言葉に、サリーシャは顔だけでなく首まで真っ赤になった。朝っぱらからいったい何を言い始めるのか。あわあわしていると、セシリオは真っ赤に色づいた耳にチュッとキスをする。

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