辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
サリーシャは困って後ろを振り返った。ここに案内した使用人と目が合ったが、彼は無言で頷くだけでなにも言ってはくれない。きっと、この二人がお客様で間違いはないのだろう。仕方がないので、サリーシャはもう一度そのお客様に向き直った。
「はじめまして。サリーシャ=マオーニにございます」
サリーシャはその若い男に向かって精一杯美しく微笑んで淑女の礼をしてみせる。その途端、無表情だった男の表情が強張り、眉間には深い皺が寄った。
自分はなにか粗相をしただろうかと不安になって、その若い男を見つめていると、男はコホンと咳払いをして立ち上がった。立ち上がった拍子に重い布張りのソファーが揺れ、ガタンと大きな音が鳴る。
その男は本当に大きな人だった。王宮に出入りしていたため、衛兵や騎士達には見慣れているサリーシャですら、その体格のよさには目をみはった。身長は平均的な男性より二回りは大きく、肩幅も胸の厚さも服の上からでも人並み以上であることが容易に想像出来る。そして、ヘーゼル色の瞳はまるで全てのことを見透かしそうなほど、鋭かった。
サリーシャは男から無言で差し出された手に自分の手を重ねた。こちらを見つめるヘーゼルの瞳が、スッと細められる。
「はじめまして。サリーシャ=マオーニにございます」
サリーシャはその若い男に向かって精一杯美しく微笑んで淑女の礼をしてみせる。その途端、無表情だった男の表情が強張り、眉間には深い皺が寄った。
自分はなにか粗相をしただろうかと不安になって、その若い男を見つめていると、男はコホンと咳払いをして立ち上がった。立ち上がった拍子に重い布張りのソファーが揺れ、ガタンと大きな音が鳴る。
その男は本当に大きな人だった。王宮に出入りしていたため、衛兵や騎士達には見慣れているサリーシャですら、その体格のよさには目をみはった。身長は平均的な男性より二回りは大きく、肩幅も胸の厚さも服の上からでも人並み以上であることが容易に想像出来る。そして、ヘーゼル色の瞳はまるで全てのことを見透かしそうなほど、鋭かった。
サリーシャは男から無言で差し出された手に自分の手を重ねた。こちらを見つめるヘーゼルの瞳が、スッと細められる。