辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
サリーシャはその方向を向いたまま呟いた。しかし、ブラウナー侯爵は面倒くさそうに首を横に振った。
「放っておきなさい」
「でも……」
「では、わたくしが見て参りますわ。少し外します」
心配するサリーシャを見かねたノーラがそう言って出入り口の方へ向かったので、ようやく納得したサリーシャはブラウナー侯爵に向き直った。ブラウナー侯爵は話を中断されてやや機嫌を損ねたようで、僅かに眉間に皺が寄っている。
「続きを。先ほど申し上げたとおり、弾丸は銃口から詰め込みます」
ブラウナー侯爵がもう一度説明始める。サリーシャはそれを聞きながら、おずおずと見よう見まねで自分もやってみた。
白い紙に包まれた火薬は黒砂のようにサラサラしており、弾丸は宝珠のように丸く、銀色に鈍く光っている。それを順番に銃口から詰め込んで押し込み、最後にマスケットレストにのせる。マスケットレストはただの一本の棒のような形状をしているが、それにのせただけで銃はとても安定した。取っ手の部分を持てば女のサリーシャでも難なく支えられるほどだ。
「引き金を引けば発射します」
「ええ」