辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
その眼差しは軍人らしく、絶対に狙った獲物は逃がさないとでも言いたげだ。あまりにも鋭い眼差しにサリーシャは幾ばくかの恐怖心を感じ、咄嗟に手を引こうとした。しかし、それは叶わなかった。セシリオの手がしっかりとサリーシャの手を握っていたのだ。
「あの……」
普通、挨拶が終われば手は離される。というより、手は重ねるだけで、しっかりと握る人など、なかなかいない。どうすればよいのか分からずに戸惑っていると、後ろにいた男性が窘めるようにセシリオに声を掛けた。
「セシリオ様。サリーシャ様がお困りですよ」
「あ、ああ。これは失礼」
それを聞いたセシリオは慌てたように手を離し、小さく「済まなかった」と呟いた。ぽりぽりと耳の後ろを右手で掻き、バツが悪そうに視線をさ迷わせる。と、その時、外で執事のセクトルと話し込んでいたマオーニ伯爵がやっと部屋に現れた。
「お待たせいたしました。アハマス閣下」
「あの……」
普通、挨拶が終われば手は離される。というより、手は重ねるだけで、しっかりと握る人など、なかなかいない。どうすればよいのか分からずに戸惑っていると、後ろにいた男性が窘めるようにセシリオに声を掛けた。
「セシリオ様。サリーシャ様がお困りですよ」
「あ、ああ。これは失礼」
それを聞いたセシリオは慌てたように手を離し、小さく「済まなかった」と呟いた。ぽりぽりと耳の後ろを右手で掻き、バツが悪そうに視線をさ迷わせる。と、その時、外で執事のセクトルと話し込んでいたマオーニ伯爵がやっと部屋に現れた。
「お待たせいたしました。アハマス閣下」