辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「ノーラ? どうした?」
「サリーシャ様がどなたがいらしたのか見てきて欲しいと。旦那様が戻られたのですね。サリーシャ様、お喜びになりますわ」
「? サリーシャは今、どこにいるんだ?」
「射撃演習場にいらっしゃいますわ。ブラウナー侯爵とご一緒です」

 セシリオは、我が耳を疑った。

 なぜサリーシャが、よりによってこの領主館の中でも最も縁がなさそうな射撃演習場にいるのか。
 なぜ、ブラウナー侯爵と一緒なのか。
 そして、あの銃声はなんなのか。

 嫌な予感が湧き起こり、夜通し馬を走らせた働きっぱなしの疲れも、フィリップ殿下を待たせていることも、全て忘れてセシリオは射撃演習場へと走り出した。そこで目にしたのはブラウナー侯爵がサリーシャに銃口を向けるという衝撃的な光景だ。

「サリーシャ!」

 セシリオは、大きな声でその名を叫んだ。
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