辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

第六話 真相

■ 第六話 真相

 突然現れたフィリップ殿下は、セシリオの陰に隠れるようにいるサリーシャと目が合うと懐かしそうに目を細めた。しかし、その表情はすぐにこわばったものへと変わる。サリーシャの様子がおかしいことに、気付いたのだろう。サリーシャから目を逸らすと、観察するようにセシリオとブラウナー侯爵の顔を交互に見比べた。

「今さっきアハマス卿とともにここに到着して客間にいたのだが、いつまで経ってもアハマス卿が来ないと思ったら、ここで随分と珍しいものを用意して演習していると聞いてな。待ちきれずに来てしまったぞ。俺にも見せてくれ」

 その表情はすでにいつもと変わらず穏やかで、優しげだ。しかし、サリーシャには長年の付き合いからフィリップ殿下の浮かべる笑みが上辺だけのものであることに、すぐに気がついた。なによりも、あの澄んだ泉のような青い瞳が氷のように冷ややかだ。

 呆けたような表情を浮かべていたブラウナー侯爵は、慌てたように頭を垂れる。ここに来てからふてぶてしい態度しか見ていなかったサリーシャは、その様子を見て目の前の人の変わり身の早さに驚いた。
 しかし、大方の貴族はこんなものかもしれない。養父であるマオーニ伯爵も、自分より高位の貴族にはいつもペコペコと頭を下げていた。
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