辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

「これは殿下。なぜここに……?」
「ここにいる人々に、いろいろと用事があったのだ。ここに俺がいると、なにか都合が悪いか?」
「いえ。そのようなことはございません」

 明らかに動揺しているブラウナー侯爵はぐっと口ごもる。フィリップ殿下はゆったりとした動作でブラウナー侯爵に近付くと、興味深げにその手に握られたものを眺めた。

「これがフリントロック式のマスケット銃か。王宮にもまだ殆ど配備されていない。俺も実物を見るのはまだ数回目だ。見てもよいか?」
「はい」

 フィリップ殿下はブラウナー侯爵からマスケット銃を受け取ると、じっくりとその銃身を眺めた。いつの間にか、フィリップ殿下のまわりには十人以上の近衛騎士が囲んで立っている。フィリップ殿下は一通りのパーツを眺めてから、それをブラウナー侯爵に返した。

「使い方を教えてくれ」
「もちろんです」

 ブラウナー侯爵は先ほどサリーシャに教えたことをもう一度フィリップ殿下に説明してゆく。横に立つフィリップ殿下は感心したようにそれを聞いていた。
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