辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
フィリップ殿下は大げさなほどがっかりした表情を見せると、両手を天に向けて肩を竦めて見せた。そして、気を取り直したように再びマスケット銃に興味を示した。
「このマスケット銃を今回の開戦に合わせ、何丁用意した?」
「五千丁にございます」
「五千丁? そんなにか。確か、大砲もあったな。先ほど、ここへ到着する前に貴方が納品した倉庫をアハマス卿に案内してもらい、俺も少し見せてもらった。あれだけの数を揃えると、壮観だな。さすが、半年以上も前から着々と集めていただけある」
感心したように、フィリップ殿下は笑顔を見せた。ブラウナー侯爵は人形のように表情を消したまま、フィリップ殿下の顔をじっと見つめている。
「ブラウナー卿。試しにこれで撃って見せてくれ。さぞかし、素晴らしい破壊力なのだろうな?」
「殿下。残念ですが、こちらには今、弾が入っておりません。先ほど誤発射してしまいました」
「ふざけるなっ! サリーシャに向けて撃っただろう!?」
語気を荒らげたセシリオに対し、ブラウナー侯爵は肩をすくめてみせる。
「だから、それは事故による誤発射ですよ。サリーシャ嬢に当たりそうになったことは謝罪しましょう。いやはや、本当に肝が冷えました」
「ほう? サリーシャに?」