辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
第八話 抱擁
■ 第八話 抱擁
フィリップ殿下としばしの楽しいときを過ごしたサリーシャは、その足でセシリオの元に行った。
居住棟の三階の突き当り、セシリオの部屋の大きな両開きの扉の前に立つと、すっと大きく息を吸う。あまりここの部屋に来たことはないが、来るときはいつも少し緊張する。
サリーシャは大きな木製ドアの彫刻を見つめながらトントンッとドアをノックした。しかし、しばらく待っても中からの返事はなかった。
「閣下?」
声をかけながら金色のドアノブを回したが、鍵が掛かっているようで開かない。何度か回してみたが、ドアは開かないし、中から物音もしなかった。
「おかしいわね」
サリーシャは首をかしげて小さく独り言ちる。
先ほどセシリオに会いに初めて執務棟に足を踏み入れた。そこで勤務中の人にセシリオの執務室の場所を聞いたところ、不在だから居住棟の私室ではないかと言われたのだ。
「どこに行かれたのかしら?」
フィリップ殿下としばしの楽しいときを過ごしたサリーシャは、その足でセシリオの元に行った。
居住棟の三階の突き当り、セシリオの部屋の大きな両開きの扉の前に立つと、すっと大きく息を吸う。あまりここの部屋に来たことはないが、来るときはいつも少し緊張する。
サリーシャは大きな木製ドアの彫刻を見つめながらトントンッとドアをノックした。しかし、しばらく待っても中からの返事はなかった。
「閣下?」
声をかけながら金色のドアノブを回したが、鍵が掛かっているようで開かない。何度か回してみたが、ドアは開かないし、中から物音もしなかった。
「おかしいわね」
サリーシャは首をかしげて小さく独り言ちる。
先ほどセシリオに会いに初めて執務棟に足を踏み入れた。そこで勤務中の人にセシリオの執務室の場所を聞いたところ、不在だから居住棟の私室ではないかと言われたのだ。
「どこに行かれたのかしら?」