辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「……? ふしだら?」
怪訝な顔をしたセシリオが、胸に抱いていたサリーシャから体を引き剥がすと、こちらを凝視したままピシッと固まった。
「あの……、その……。わたくし、一晩閣下にお会い出来なかっただけで、寝ている間に閣下に優しくキスをされて『愛している』と囁かれる夢をみたのです。一晩会えなかっただけなのに……」
「……夢?」
熱くなった頬を両手で包んだが、きっと真っ赤になっているのはバレバレだろう。ちらりとセシリオの方を窺い見ると、なぜか表情を消したセシリオの目が据わっており、じっとこちらを見つめている。呆れられてしまったかもしれないと思って、サリーシャは慌てた。
「き、きっと、わたくし、閣下が足りていなかったのです。閣下がいらっしゃらなくて夜に抱きしめて頂けなかったから、あんな願望を具現化したような夢を……」
「……そんな願望があったのか?」
真顔でセシリオに尋ねられ、サリーシャの肌は益々赤くなる。
「だって、昨日は閣下が足りませんでした。閣下がいなくて、すごく寂しかったのです」