辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

 シュンとするサリーシャの横で、セシリオは片手で目元を覆った。

「くそっ! なんなんだ、この可愛さは。俺を悶え殺す気か?」
「え?」

 もごもごと吐き捨てるように言った呟きがよく聞き取れずに、サリーシャは聞き返した。しかし、セシリオはそれに答えることはなくサリーシャの両肩に手を置くと、大真面目な顔で見下ろした。

「それは困ったことだな? サリーシャ」
「はい、本当に……」

 サリーシャはぎゅっと眉尻を下げる。自分の事ながら、こんなことでは夫の留守中にどうなってしまうのか。これから先が心配でならない。困り果てるサリーシャを見て、セシリオはなぜか意味ありげにニヤリと笑った。
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