辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

 サリーシャはスカートの裾を持ち上げて、少し膝を曲げる挨拶のポーズをとった。素敵なことは素敵なのだが、いかんせん華がない。おずおずとそう切り出すと、鏡越しに目が合った仕立屋は片手を頬にあて、うーんと唸った。

「裾にレースを足すことや、腰にリボンを足すことは可能です。ただ、全体に刺繍を施すなどの大規模な変更は、時間的に難しいかもしれません」
「そう……」

 結婚式までは二ヶ月を切っている。身から出た錆とはいえ、こんなにもシンプルなデザインにしてしまった自分が恨めしい。一生に一度の、世界で一番好きな人の花嫁となる、特別な日の衣装なのに。

 シュンとするサリーシャに、仕立て屋はおずおずと話しかけた。

「全体への刺繍は無理ですが、スカートの裾にレースをあしらったうえでスカートに花飾りを飾るのはいかがでしょう? 裾や首元のレースと同じ素材で作れば統一感も出て華やかになると思います。お勧めは、花の中心に真珠をあしらうことですね。格段に華やかになります」
「真珠?」
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