辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
サリーシャは聞き返した。伯爵令嬢として生きてきたので、真珠のことはもちろん知っている。遠い異国の海で取れる、まん丸の白く美しい宝石だ。そして、それがどんなに高価であるかも知っていた。
「はい。いくつか付けるだけで、ウェディングドレスが途端に華やかになります。現王妃殿下が結婚式で着られた衣装にも、真珠があしらわれていたことは有名です」
「そうなの……」
サリーシャは鏡を見つめながら、じっと観察するように目を細めた。見れば見るほどシンプルだ。
デザイン段階で何度も仕立て屋がもっとこうしてはとアドバイスしてくれたのに、なぜ頑なに断ってこんなにもシンプルなデザインにしてしまったのか!
その真珠と花飾りを付けて華やかになるのであれば、是が非でもお願いしたい。しかし、気になるのはそのお値段だ。
「セシリオ様にも相談してから決めてもいいかしら?」
「はい、もちろんです。せっかくですから、華やかな方がサリーシャ様にはお似合いになると私共も思います」
仕立て屋はにっこりと微笑むと、深々と頭を下げた。