辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「いいか、サリーシャ。ウェディングドレスはきみの満足いくようにしっかりと作るんだ。なんなら、二、三着作っても構わない」
眉を寄せて力説するセシリオをサリーシャは半ば唖然として見つめた。何日も祝う王族でもないのに、ウェディングドレスを二、三着作るなど、聞いたことがない。
「それはちょっと……。でも、わかりましたわ。なるべく満足いくように、明日にでももう一度仕立て屋さんに行って参ります」
「ああ、それがいい。いいか、サリーシャ。一切の懸念事項を払拭するような、満足いく一着を作るんだ。金は気にするな。わかったか?」
「はい。わかりましたわ」
──セシリオ様が、実は、こんなにウェディングドレスにこだわりのある方だったなんて!
サリーシャは心底驚いた。人は見かけによらないとは、まさにこのことだ。
『ウェディングドレスは女の一生の夢』とはよく聞くが、セシリオに関しては男でも当てはまるようだ。これは、中途半端なものなど着たら大変なことになりそうだ。
コクコクと頷くサリーシャを見て、セシリオはようやく満足したように朗らかに微笑んだ。