辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
表情を明るくしたサリーシャが横を見上げると、こちらを優しく見つめるセシリオと目があった。
「サリーシャのお気に召すままに。どこを案内してくれるのか、楽しみにしておく」
そう言われて微笑まれ、トクンと胸が鳴る。
サリーシャは咄嗟に自分の胸に手をあてた。セシリオに恋していると自覚してからもう幾日もの日々が経っているのに、慣れるどころかときめきは増すばかり。どんどん好きになってしまい、自分ではどうしようもない。
「閣下は、ずるいわ」
「? なに? 聞こえなかった。どこに行きたい?」
怪訝な表情をしたセシリオが聞き返してきたが、サリーシャはプイッとそっぽを向いた。馬車の中は車輪が回る音や馬の蹄の音が響いてくるので、案外騒がしいのだ。
「サリーシャ、どうした? 暑い? 顔が赤い」
セシリオは僅かに眉を寄せた。サリーシャの顔を自分に向けさせると心配そうに覗きこみ、最後にそっと頬を撫でる。
ほら、やっぱり。とサリーシャは思う。
無自覚にこんなふうに優しく触れて、益々自分を夢中にさせるのだ。自分ばっかりがセシリオを好きな気がして、なんだか悔しい。こんなに夢中にさせるなんて、一体どうしてくれようか。