辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「わたくし、サリーシャ様の可憐な雰囲気には絶対にこのあたりが似合うと思いますの」
エレナは一枚の生地を手に取ると、それをサリーシャに見せた。赤みのかかったオレンジ色で、艶やかな見た目は触らずとも上質なシルクだと想像がつく。似合うかどうかはサリーシャ自身にはよくわからなかったが、とても素敵な生地だとは思った。
「サリーシャ様は髪もお美しい金色でしょう? 本当に羨ましいわ。わたくしなんて、つまらない色だもの」
その生地を広げて目の前に置きながら、エレナは少し口を尖らせて自分自身の茶色い髪と一房摘まんだ。
「エレナ様の髪はお美しいですわ。昔、フィリップ殿下がエレナ様の髪はショコラのようにほどよく甘そうだから、思わず食べたくなるような魅力があると仰っておりました」
「え?」
パッと持っていた一房の髪を離したエレナの白い肌が、みるみるうちにバラ色に染まる。真っ赤になった両頬を両手で包み込むようにすると、エレナは少し上目遣いでサリーシャを見た。