辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 ということは……

 サリーシャは青ざめた。

「もしかして……。大変だわ……」
「はい?」

 両手で口元を抑えるサリーシャを、ノーラが怪訝な顔で見つめる。

 きっとそうなのだ。セシリオはフィリップ殿下の婚約発表の舞踏会で賊の侵入による騒ぎがあったことは知っていても、それでサリーシャが傷物になったということは知らないに違いない。顔合わせの際も、こちらからはわざわざ背中に大きな傷があることを言ったりはしていない。ということは、セシリオがそのことを知らなくてもなんら不思議はないのだ。

「どうしましょう」

 サリーシャは自分自身をぎゅっと抱きしめた。
 これが単に遊びに行くだけなら、別にいい。けれど、サリーシャは彼の妻になりに行くのだ。妻となったら何をするのか、経験はなくともある程度の知識くらいはある。

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