辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
フィリップ殿下は組んでいた長い足を戻すと、笑顔で立ち上がって目の前のソファーを指さす。セシリオがそこに座ると、しばらくして侍女が紅茶を運んできた。
「本当は早速酒でも飲み交わしたいのだが、陛下の謁見前に酔っぱらうわけにもいかぬ。紅茶だが、まあくつろいでくれ。酒はまた後で」
出された紅茶からはとても芳醇な香りが漂ってきた。セシリオの屋敷で使っている紅茶も高級品だが、これは間違いなく最高級品だろう。そもそも、サリーシャが来るまでは、食べ物に無頓着なセシリオの屋敷には高級紅茶もなかった。
「それで、父上に謁見する前に褒賞の最終確認だ。陛下から賜った後に変更は出来ないからな」
「先に書簡でお伝えしたとおりです」
「それは読んだ。なかなか強気な要求だな」
フィリップ殿下はくくっと笑い、肩を震わせる。
フィリップ殿下はアハマスを去る前に、何か褒賞で欲しいものがあれば言って欲しいとセシリオに伝えた。それを受けてセシリオが要求したものは二つだ。