辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 ──この醜い傷を見られたら、わたしは捨てられるかも知れない。

 真っ先にそんなことが頭に浮かんだ。
 こんな醜い傷を背中に負った娘など、通常であれば妻に望むわけがない。マオーニ伯爵家と縁を結びたがっている下位貴族であれば、それでもサリーシャを妻に望むこともあり得るが、アハマス辺境伯はマオーニ伯爵家よりも格上だ。傷物になったサリーシャを迎えても、なにもメリットはない。

 考えれば考えれるほど、そうに違いないと思えてきた。
 サリーシャは到着前から気分が落ち込んでくるのを感じ、膝の上の手をぎゅっと握り締めると、無言で顔を俯かせた。
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