辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
サリーシャはほんのりと頬を赤く染める。
セシリオに言われると、本当にそんな気がしてくる。ほんの些細なものも、彩りを増して素敵に感じるのだ。サリーシャはふと、作りかけの手元の花輪に視線を落とした。まだ花冠と呼ぶには短いが、腕輪くらいにはなる。それを、くるりと丸めて花輪にした。
「……わたくしは、フィリップ殿下の横に立つためだけにこの世界に入ったのだとずっと思っていました。──あの時は、お行儀やら文字やら刺繍やら、とにかくお勉強が大変で……。幼かったわたくしには辛いことも多かったのです」
セシリオは何も言わず、静かにサリーシャの話に耳を傾けている。
「けれど……、最近はこう思うのです。わたくしは、きっと閣下と出会うためにこの世界に入ったのではないかと」
サリーシャはこの貴族の世界に、フィリップ殿下の隣に立つためだけに送り込まれた。
ずっとそう思っていた。