辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 けれど、辛かった礼儀作法のお勉強も、絶望に浸ったあの事件も、すべてはこの人に出会うためだったのではないかと思えば、不思議といい思い出になったような気がした。
 王宮の大広間は、サリーシャが刺された場所でもある。フィリップ殿下の結婚式の舞踏会に行くのは正直怖いけれど、セシリオが一緒ならば、それさえも大丈夫な気がした。

 嫌な思い出も、辛かった思い出も、全てが素敵なものへと塗り替わってゆく。
 幸せな未来など思い描けなかったのに、今ならそれが掴める気がした。
 そして、それはきっとこれからも続くだろう。

 セシリオはサリーシャを見つめ、少し首を傾げた。

「サリーシャ。それは少し違う」

 そして、体を起こすと手を伸ばし、いつものように優しく頬を撫でる。

「俺の隣で幸せになるため、だろう?」

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