辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
 ◇ ◇ ◇


 セシリオはいつになく落ちつかない様子で、部屋の中を行ったり来たりしていた。机に向かって執務に集中しようと思うのだが、十分もすると窓の外が気になってならない。我慢出来ずに結局は立ち上がって窓辺にゆき、外を眺めては何かを確認するように注意深く視線を動かす。
 仕事の速さには定評があるのだが、今日はさっきからちっとも仕事が進んでいない。

「おい、セシリオ。そんなに右往左往してもお前の待ち人が到着する時間は変わらないぞ。さっさと仕事しろ」

 同じ執務室で書類を確認していたアハマスの軍隊ナンバー2であるモーリスは、呆れたようにセシリオを(たしな)めた。

「っつ! わかっている」

 痛いところを突かれたセシリオはぐっと眉を寄せ、おずおずと椅子に座って書類に目を通し始める。しかし、十分もすれば元の木阿弥。また窓の外が気になってたまらなくなる。まるで、誕生日を前にプレゼントを待つ子供のようだと、セシリオは自分自身に苦笑した。

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