辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
こちらを見つめるセシリオの瞳が優しく細まった気がした。すぐに目を逸らされてしまったので、まっすぐに前を向く横顔をサリーシャは覗い見た。
前回会った時も感じたが、やはりとても大きな人だと思った。
今日着ている深緑の上下服には金色の肩章と胸元にも勲章が付いており、きっとこれはアハマスの軍隊の制服なのだろう。髪は長髪を纏めていることが多い貴族男性には珍しく、衛兵のように短く切られている。そして、その横顔にはいくつかの古傷があるのが見えた。
屋敷の方に目を向ければ、正面の扉までのアプローチには使用人とおぼしき人々がずらりと並んでいた。その中には、セシリオと同じ深緑の上下服を着て、セシリオのように体格のよい男性も何人か混じっていた。
「ここは遠かっただろう。疲れている?」
エスコートされて無言のまま足を進めていると、小さく問いかける声が頭上から聞こえた。サリーシャが横斜め上を向くと、ヘーゼル色の瞳が心配そうにこちらを見つめていた。
「はい。少しだけ」
「そうか。ここは王都からは遠い、辺境の地だからな。では、すぐに部屋に案内させよう。ゆっくりと休んでくれ」
「ありがとうございます」
サリーシャは小さくお礼を言った。