辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
部屋の中をうろうろと歩き回っても解決策は出てこない。客間には絨毯が敷かれており、その格子模様がまるで出口のない迷路のように見えた。
「サリーシャ様。お待たせしました」
そうこうするうちに、ノーラがやってきた。クラーラもたらいにお湯と布を入れたものを部屋に運びこむ。その様子を見ながら、サリーシャは小さく首を振った。
どう誤魔化そうと、こんな事がばれないはずがない。気付かれない可能性を模索しても、その糸口すら思い浮かばないのだから。
ぼんやりとたらいがテーブルにセットされるのを見つめていると、作業を終えたクラーラはお辞儀をしてから笑顔で部屋を辞した。
「では、後ほどまた伺います」
「ええ、ありがとう」
その姿を見送りながら、サリーシャは決心した。
どうせいつかはこの事がばれて、自分は路頭に迷う運命なのだ。
ならば、隠せるところまで隠し通すまでだと。