辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する

第二話 朝食の席で

■ 第二話 朝食の席で

 朝食が用意されているプライベート用ダイニングルームは屋敷の三階部分に位置していた。

 サリーシャはクラーラに案内されながら、今日も辺りをキョロキョロと見渡した。
 この屋敷の半分がセシリオ達の生活スペースになっていることは、昨日セシリオ本人に聞いた。クラーラによると、生活空間となる建物半分は三階建てになっており、一階は大きな催しを行う際の大広間や応接間、厨房、使用人達の休憩スペースがある。サリーシャの部屋がある二階部分は来客が滞在するための部屋と図書室、倉庫が、そして三階部分にここの主であるアハマス辺境伯──セシリオの私室や辺境伯夫人のための部屋、子供達のための部屋があるという。

「あちらの一番突き当たりが旦那様の私室です。隣が奥様のためのお部屋ですから、じきにサリーシャ様にもお移り頂きます。結婚式の後ですわね」

 クラーラは三階まで階段を上ると、笑顔で長く続く廊下の向こうを指し示した。そちらを見ると、突き当たりには木製の両開きの大きなドアがあるのが見えた。ここからは見えないが、その手前にもいくつかドアが並んでいるのだろう。
 自分があそこに住む日など、果たして来るのだろうか。きっと来ないだろうとサリーシャは思った。
 にこにこしながら説明するクラーラを裏切っている気がして、サリーシャは曖昧に微笑むとそこから目を反らした。
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