辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
朝食の会場に入ったとき、サリーシャはあまりにも豪華な朝食に目をみはった。
パンだけでも十種類以上、ハムやスープ、サラダに卵料理、煮物に炒め物まで、ありとあらゆる料理がテーブルにところ狭しと並べられている。
部屋はここの屋敷らしく、ほとんど装飾のないシンプルな作りだった。白い壁に大きな木製のテーブルセット。壁には絵が飾られる代わりに、装飾が施された盾が飾られていた。そんなところも、このアハマスの土地柄を感じさせた。
セシリオは先に到着しており、サリーシャが入室すると慌てた様子で立ち上がった。ガシッと椅子が鳴り、椅子が倒れそうになるのを慌てて押さえる。クラーラが「お行儀が悪いですわ、旦那様」と眉をひそめて嗜めた。すると、セシリオはばつが悪そうに視線をさ迷わせ、椅子の位置を自分で直していた。
──なんだか、初めてマオーニ伯爵邸にいらしたときを思い出すわ。
サリーシャは思わず笑みを洩らした。
あのときも、セシリオは気まずそうに視線を漂わせていた。ふと気付けばセシリオが目を見開き、じっとこちらを見つめていた。サリーシャは慌てて表情を消し、澄ました顔で頭を下げた。