辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「それはよかった。部屋に不都合はない?」
「とても快適ですわ。快適過ぎて、寝過ごしてしまうくらい」
「ははっ、そうだったな。足りないものは?」
「今のところは大丈夫ですわ」
「そうか」
セシリオが安心したように小さく頷いたところで、再び侍女のクラーラがコホンと咳払いする。
「旦那様。お話に夢中になるのは結構でございますが、先ほどからサリーシャ様が立ちっぱなしです。少しは配慮して下さいませ」
「っ! そうか、悪かった。座ってくれ」
セシリオはぐっと言葉に詰まり、眉間をぐっと寄せた。絞り出すようにそう言うと、自身の向かいにある椅子を片手で指し示した。
「はい。失礼いたしますわ」