辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
夕食後、セシリオはサリーシャを階下の部屋までエスコートしてくれた。差し出された腕に手を回すと、触れるのは分厚い軍服の感触と、その上からでもわかるほど筋肉質な腕。今までの夜会で貴族のご子息方にエスコートされた時に触れた上質な綿や絹の感触とも、程よくスレンダーな腕とも全く違う。
「今日もゆっくり休むといい。湯あみは、クラーラとノーラが少ししたら用意しに来るはずだ」
「はい。ありがとうございます」
部屋の扉を開けてこちらを向いたセシリオを見上げて、サリーシャはお礼を述べた。こちらを見るヘーゼル色の瞳とまっすぐに目が合い、どきりとする。
「サリーシャ」
「はい?」
サリーシャが見上げると、ゆっくりとセシリオの手が近づき、サリーシャの頬をさらりと撫でた。
「おやすみ。よい夢を。また明日」
すぐに手は離れ、そう言うとセシリオは微笑んだ。