辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する
「やはり、きみは笑顔の方がいい」
「はい?」
「ここに来てからのきみを見ていると、時々なにか思い詰めたように暗い表情をしている。きみは笑顔の方がよく似合う」

 セシリオの言葉を聞き、サリーシャは驚いた。セシリオは時々塞ぎ込むサリーシャに気付き、気分転換をさせようとここを紹介したのだろうか。

「どうした?」
「閣下はお優しいですね」
「そう? 婚約者殿を大切にするのは、当然だろう?」

 そう言ってセシリオはサリーシャに手を伸ばす。大きな手が優しく頬に触れ、胸の鼓動がトクンと跳ねた。セシリオは婚約者に対する礼儀として優しく接している。それなのに、自分が愛されているから優しくされているのだと、サリーシャは勘違いしそうになる。

「っ、ありがとうございます」
「どういたしまして。その顔を見られただけで、十分だ」

 セシリオは立ち並ぶ書架の方をちらりと見た。

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